本の紹介 「センス・オブ・ワンダー」
原著 レイチエル・カーソン
和訳とそのつづき 森田 真生
カーソンはアメリカ海洋生物学者です。本著書の前に「沈黙の春」という本を著しています。「沈黙の春」(1962年)は、農薬などの化学物質が地球環境に及ぼす影響を警鐘しています。現在の地球環境問題の最初の問題提起になるものです。
カーソンは「センス・オブ・ワンダー」にて、甥のロジャーと海を訪れた時のロジャーの新鮮な驚きと好奇心に気づき、大人が教えるよりも、子ども自身の感受性の鋭さと学習力に配慮することの重要性に気づきます。
“まだ1歳半のころ、彼(ロジャー)はそれらを「ウインキー(ベリウインクル、タマキビ科に属する巻貝の仲間)「ウエク(ウエルク、巻貝の仲間)」「マッキー(マッスル、イガイ科に属する二枚貝の仲間)」などと呼びました。名前を教えようとしたことは一度もないのに、いったいどうして覚えたのかわかりません。”(P16)
自然の営みの不思議さをロジャーが感動し言葉にする時、カールソンは教えるのではなく、ロジャーと一緒に自らの感動を研ぎ澄まし、共に認識しようとします。
大事なことは子どもと一緒になって自然の理を深く感じることです。
“あのまっすぐな眼差しと、美しくて畏怖すべきものをとらえる真の直観が、大人になるまでにかすみ、ときに失われていくことさえあるのは残念なことです。(中略)
生まれ持った「センス・オブ・ワンダー(驚きと不思議に開かれた感受性)」を保ち続けようとするなら、この感受性をともに分かち合い、生きる喜びと興奮、不思議を一緒に再発見していってくれる、少なくとも一人の大人の助けが必要です“(P21)
僕たちの「センス・オブ・ワンダー」 森田真生
森田氏は京都の鴨川周辺にて、4歳と1歳の子どもと川遊びします。
子供は魚やカニを探し、流れる落葉をつかみ、遊びに興じます。
ほかにもいろいろ流れてきますが、二人はそのひとつひとつに強い好奇心を抱き「自然」を感じようとします。カエルを手にした時、指先に伝わる感触を確かめようとします。その形、色などじっと観察します。
長男が4歳になったとき、彼はこの観察から「物語」を語り出します。大人が聞けばたんなる空想ですが、本人にとっては自然を観察してきた帰結です。
森田氏は息子の感性を信じます。下手に名前を付けたり、解説してみせたりしません。
また子どもの感覚のほうがはるかに豊かなのです。子どもに見えて、大人に見えないものが沢山あります。森田氏自身子どもの感性を学びながら、自らの知性を磨きます。
結 僕たちの「センス・オブ・ワンダー」へ(p166)
「現代において、環境の問題は、カーソンの時代に比べていつそう深刻化している。根底から崩れていくこの世界の現実を前に、人類がこれまでの生き方をあらためていく必要があることは明らかである。」(P172)
森田氏は、ここから更に、社会学者見田宗介氏の著書「現代社会の理論」から、「生きるということはどんな生でも、最も単純な歓びの源泉」を引用しつつ、「必要よりも、本源的なものー限りある生を生きる「『歓び』を発見し、分かち合い、育んでいくこと。これから生まれてくるすべての子どもたちが、『きてよかったね』と心から思える、そういう世界を作り出していくこと」を、結びの言葉としています。
投稿 井藤和俊
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