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[2024年10月号] 寄合カフェ報告


命を育む『農』と『食』を考える ~誰かに話したくなる稲の話~

           講師 村田達郎 東海大学名誉教授(菊池市図書館友の会代表)


菊池市図書館友の会として初めての試みとして、9月21日(土)午後5時より、菊池市中央図書館ステップにて、本会代表でもある東海大学名誉教授村田達郎氏を講師に、表記の演題で「寄合カフェ」を開催しました。参加者43名。以下講話内容です。


 ご飯と言えば本来は米の飯のことですが、ご飯は食事の代名詞となり、麺類でも、ご飯食べたと言う。お米、おにぎり、お茶づけ、おかゆと、「お」を付けるのは、米に対する敬意の表れである。

 米の色は白く、白米と言うが、もともと大昔の野生の米は赤米であり、突然変異によってできた白粒が人に好まれたことから今日のような白米が主体となった。しかし、古くから赤い色が魔よけの効果があるとされていたので、お祝い事には、西日本では、小豆で赤飯にする。

 「モチ米」は「ウルチ米」より消化吸収しやすいので、血糖値が早く上がり、幸福感をもたらすので、行事食として餅をつき、食べている。

 稲の品種改良は、稲が自家受粉であるので除雄が必要となるが、現在は「温湯除雄法」(43℃のお湯に開花直前の穂を7分間つける)で「おしべ」の能力を除去した後に、父親となる花粉で交配する。その後選抜し、遺伝的に安定させる必要があるので新品種が誕生するまでには10年以上が必要である。今は暑さに強くおいしい稲の品種の育成が課題である。

 稲は、連作が可能である。100年以上連作が可能なのは稲だけである。水田に水を貯めると、土壌が酸欠状態となり、作物の生育に有害な微生物や線虫などの生物が死滅する。

 水田の多面的機能は、いろいろあるが、10cm水を貯めたとすると10アール当たり100トンの水を貯められる洪水調節の機能がある(実際は地下に浸透するので、それ以上の貯水力が期待される)。また田んぼの稲2株で茶碗1杯の米ができ、赤とんぼが1匹生まれ、自然保護に役だっている。

 米や稲をもとにいろいろな単位ができている。

1坪は1日分の米3合を作るのに必要な面積約3,3㎡である。1反(10アール、1,000㎡)

は一人が1年間に食べる米約150kgを作るのに必要な面積であり、これを1石とした。

肥後54万石は、54万人を養える財力があったということである。また、1石を買えるお金が1両であり、小判の形は俵の形、刻まれている線は藁の模様である。

 日本の文化には、稲や米と関わりの深い行事や名称が多い。

「さ」はもともと田の神を意味する言葉である。田植えする五月の「さつき」「さなえ」「さおとめ」。サクラの「さ」は田んぼの神、「くら」は神霊が寄り付くものという意味で、桜の木の下で神様と供食し、豊作を祈ることである。

 日本の食料自給率は38%と低く、外国からの輸入に頼っている。かってイギリスは食料自給率は45%だったが、半世紀かけて現在72%に達している。日本は農業就業人口もかってなく減少し、後継者不足である。自給率向上と後継者対策は喫緊の課題である。

 新渡戸稲造氏は、著書「農業本論」で「農と工は双生児なるべし。けだし共に長育し、また共に衰死す」(明治31年)と言っている。

佐賀の農民作家 山下惣一氏は「農健やかにして食健やか 食健やかにして人健やか」との言葉を遺している。


 素晴らしい村田先生の講話を受けて、引き続き活発な質疑が行われました。参加者のアンケートも回答いただきました。寄合カフェの運営に活かしてゆきたいと思います。

ありがとうございました。                    (文責 井藤和俊)


第二回『寄合カフェ』

12月14日(土)午後5時~7時  菊池市中央図書館ステップ

講話「菊池1,000年の記憶と記録」 菊池市アーカイブマイスター 坂本博氏、

                 (サブ)菊池市街中案内人 坂本栄子氏

                           



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