図書館論「図書館を語る~未来につなぐメッセージ」
山崎博樹 編著 青弓社 2021年発行
公共図書館は本の貸し借りだけの仕事をするところと思われている。
公共図書館には、諸外国や日本の古典的な文献はじめ、文学書、実用書、芸術関係図書などは、どこの図書館でも、数万冊以上揃えられている。しかし、その図書館に、国や県、市役所の各種統計、政策要綱、通達や報告書などの資料が沢山眠っていることは、あまり認識されていない。
今、少子化、高齢化、町おこし、地域おこしなどが課題になっているが、それらの課題解決に図書館の資料が活用されているだろうか?
図書館職員がそれらの課題解決の資料を提供するレファレンスの能力(注参照)を備えているだろうか?本書は、それらの疑問を投げかけ、今後の公共図書館の在り方を提案している。
(注)レファレンス 図書館利用者が学習、研究、調査を目的として必要な情報、資料などを求めた際に、必要とされる情報、資料を検索、提供してサポートする業務
今はレファレンス・サービスという言葉も市民に知られていない。まず、利用者とのコミュニケーションをきちっととることのでき、その中で出てくる疑問や課題について的確に対応できる図書館職員を多く育てていくことが重要である。
回答を教えるのではなく、調査する方法を教えることがレファレンスであり、そのことで利用者が、他のことも、みずから調べる能力が身に付き、図書館としても、課題解決支援につながる。
今図書館が置かれている状況では、ICT(Information and Communication Technology 情報通信技術)にどう対応していくことができるかが問われている。
図書館が、本の貸し借りに留まるかぎりでは、電子書籍が普及していった場合、図書館の役割は見えなくなる。各家庭に電子端末が普及した時、紙の本を読みたいので図書館が必要ですという利用者がいるだろうか。
図書館は、全国の図書館のもつビッグデータをも活用して、最先端の情報を加工し、課題解決を求める利用者に届ける能力が必要とされる。とりわけ地方の公共図書館は、その地域固有の課題に応えることを求められる。地方の公共図書館には、その地方固有の資料情報が保有保存されている。
全国的には、学校図書館の問題は、校長始め教師がどれだけ学校図書館を利用しようとしているか、教育委員会が、学校図書館をどのように位置づけているかが問われている。
地方自治体によっては、学校司書の学校兼務が増えてきている。
学校図書室と公共図書館との連携も、図書の貸出に終わっている。
学校内では、教員資格を持つ司書教諭は図書業務に時間が避けず、学校司書は教職員会議での発言力が弱いなど、学校図書館の役割が十分はたせているとは言い難い。
このように、厳しい指摘がなされているが、本市では、各学校の図書司書は、市立図書館から派遣されており、市立図書館と各学校図書館との連携にも、力をいれている。
、
文責 事務局 井藤和俊
Comments