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[2024年01月号]  エッセイ 

更新日:1月2日

エッセイ「小さな女優さん」          上野亜矢子

私が教えている「そろばん教室」の中の出来事である。最近、幼稚園の妹も一緒に通うようになった小学一年生の女の子が、ある夕方の練習日、お父さんに抱っこされてやってきた。「来る途中、車の中で眠ってしまったみたいで・・・」と言われている間もグッスリ寝ている様子。お父さんは抱っこしたまま教室の中に入られて、その子の席に「ヨイショ」とおろされた。「大丈夫かなあ、ちゃんと起きてくれるかなあ」と心配したが、お父さんはそのまま帰られた。すると!!今までグッタリと寝ていたその子がシャンと座り直し、チャチャッと道具を出したかと思うと、サッと練習を始めたのである。もう、ビックリして笑い出しそうになった。さっきまでの眠くてたまらなさそうな姿はなんなの!?さながら「小さな女優さん」である。元々その子は、素直でとても頑張り屋さん。まだ一年生なのでかけ算の九九も習っていないのに、九九を完璧に覚えて、先日かけ算に加え、割り算の種目もある八級の検定試験をなんと満点で合格した程だ。

 数か月前、幼稚園の妹が教室に来てくれるようになった時、私が教えなくとも「ごあいさつはこうするんだよ」としっかり教えこみ、練習後の後片付けまでお世話を焼いていて感心したものだ。でもよく考えてみたら、まだこの世に生まれて六年くらいの幼い子どもなのだ。

大好きなパパやママは、どうしても妹の方に手がかかるから、時々こうやって「甘えたい」のだと思う。「パパがいる時の寝たフリ」「いなくなってからの、いつもの頑張り屋さん」その子の両方の姿を見た時、なんともほほえましかった。

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