読書との出逢い
上野亜矢子
私は昔から読書がとりたてて好きという訳ではなかったのだが、思い返すと中学生の頃学校の近くにあった上通りの“まるぶん”によく足を運んでいた。それも難しい文学などではなく「詩集」ばかり買っていた。中でも少ない小遣いの中から買っていたのは“銀色夏生”という作家の詩集ばかり。親元を離れて知人の家に下宿しながら学校に通っていた多感な年頃の私には、どストライクで響くものばかりだった。
詩というのは、言葉の数こそ少ないけれど、その中から想像できる情景、季節、心の動きなどは計り知れない程で、読みながら泣いてしまうものさえあった。大人になり、知り合いの染色家の方に頼んで作ってもらったタペストリーに、ずっと心のなか に残っていた銀色夏生の詩の中のフレーズを書いてもらった。「僕たちはやっていける/取り残されても/銀河の中なら」
あの頃から随分年月が経ったが、詩集好きだった影響なのか、元々国語が好きだったからなのかわからないが、今でも書くのは好きだ。友達への手紙や、新聞の読者コラム欄への投稿。ラインでの文章もついつい長くなってしまう。
菊池市にある図書館キクロスに行くのも楽しみだ。広い室内にたくさんのジャンルの本があり、ワクワクする。本を選んでいる間、ゆったりとした時間が流れるのでとても心が落ち着き、ぜいたくなひとときを過ごす事ができる。借りた本のタイトルが図書通帳に印字される度に、まるで預金が増えていくようで心が豊かになる。今度キクロスに行った時は久しぶりに詩集を見つけてみようかな。
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