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[2022年8月号] 生ましめん哉



生ましめん哉         栗原貞子

    ~原子爆弾秘話~

こわれたビルデイングの地下室の夜であった

原子爆弾の負傷者達は

くらいローソク一本の地下室を

うづめていっぱいだった。

生ぐさい血の臭い

死臭、汗くさい人いきれうめき声。

その中から不思議な声がきこえて来た。

「赤ん坊が生まれる」と云ふ

この地獄の底のような地下室で、今若い女が

産気づいているのだ。

マッチ一本ないくらがりの中

どうしたらいいのだろう。

人々は自分の痛み忘れて気づかった。

と、「私が産婆です。私が生ませましょう」

と云ったのは、

さっきまでうめいてゐた重傷者だ。

かくてくらがりの地獄の底で新しい生命が生まれたのだ。

かくてあかつきを待たず産婆は血まみれのまま死んだ

生ましめん哉

生ましめん哉

己が命捨つとも

   二十年 十一・二十五 

遺骨収集

 NHK朝ドラ「チムドンドン」を、先週7月18日~22日観ていて、遺骨収集の話しが出て来ました。NHKにしては、味なことをするなと思いました。

 普天間基地の辺野古への移転のための埋め立て工事に、沖縄戦の犠牲者の遺骨が、まだ収集されていないのに、その地の土砂を埋め立て用に使われることに、沖縄県民が厳しく反対していたことを思いだしたのです。結果的に、その戦場跡地の土砂は使わないことになったようです。

 TVドラマでは、主人公比嘉暢子の母優子が、両親を失い、米軍の捕虜収容所に収容されている時、弟を亡くしたこと。また遺骨収集をしていた嘉手刈源次氏は、親を亡くした少女の手を握って逃げていた際、爆風で手を放して、少女を死なせたことを悔いて、遺骨収集をしていることを明らかにします。

 戦さの現場では、庶民は一方的に犠牲を強いられます。

今ウクライナでも、同じことが行われています。

しかし、死の恐怖にめげず生きる力を信じます。

「生ましめん哉 生ましめん哉 己が命捨つとも」

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