新刊書「くじ引き民主主義」紹介 井藤和俊
素人がくじ引きで議員に選ばれるって 大丈夫?
その疑問に答えられるか?まず一読お薦め!
「くじ引き民主主義」(吉田 徹 著)を、最初、手にしたとき、なんだコレッて思いました。民主主義って、直接であれ、間接であれ、有権者が投票で意思表示することではないか。くじ引きってどういうこと?
この本を読むうちに、なるほど面白い考えだと思いました。
現代の代議制民主主義は、有権者が投票して、首長や議員を選ぶシステムですが、著者は、そのシステムでは、党派間の対立が有権者を分断する欠陥があり、合意形成のシステムがないと指摘しています。アメリカの現状は、まさにそのとおりです。
くじ引き民主主義は、有権者全員を対象に、その主義主張を問わず、くじ引きで、代表者を選ぶというシステムです。意見の有無を問わず、無関心の者もくじで選ばれ、その代表者間で討議し、代表者全員が合意するまで議論を尽くすというシステムです。
ここで得られた結論が、有権者全体の結論となるのです。
著者はこれを「熟議民主主義」と言います。日本でも、その実例があります。裁判員制度です。
しかし、素人が、そんな場に出て、何ができるの?専門家の間でも意見が分かれる問題を、合意できるの?という疑問が残ります。それをどうやって乗り越えていくのか?
それを実例挙げているこの書は、読む価値はありそうです。
著者は、くじ引き民主主義の歴史を、ギリシャアテネの時代にさかのぼり、現代でも、多くの場面で実施されている世界的な実例を紹介しています。
もちろん、長所、短所それぞれにあります。国政レベルで実施するのは、まだまだ困難さがありますが、有権者数が少ない地域や課題によっては、可能なシステムだと思います。
投票率が低くなっている現状、特に若者の棄権が多い現状を考えれば、くじ引き民主主義のシステムを活用することで、政治の大変革ができるかもしれません。そのような期待を持たせる、一読お薦めの本です。
「くじ引き民主主義~政治にイノベーションを起こす~」吉田 徹 著 光文社新書
菊池市立中央図書館 蔵
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